斉城昌美 (更新終了)

神狼記シリーズ

神々の王の嗣子にして精霊王、戦略家にして凄腕の戦士でもある〈神狼〉アシュラウルが、人間たちや精霊を率いて、邪悪な妖魔が神々への復讐のために作り上げた強大な帝国に立ち向かう……という、ファンタジー戦記の超大作です。この作品は、〈神狼記〉〈黒狼秘譚〉〈白狼綺伝〉の三つを合わせて一つのシリーズ(3部作)を構成しています。どれからでも読める構成にはなっていますが、「神狼記」は最後の方がいいと思います。なお、時系列順では、黒狼秘譚→白狼綺伝→神狼記となります。

物語の主人公は、人間でありながら、神々の島で神々の王の嗣子として育てられた、〈神狼〉アシュラウル。運命の神により神々の島から人間の世界に戻されたアシュラウルは、心の底から争いを嫌い、また神としてではなく人間として生きることを願っていました。しかし、その願いもかなわず、アシュラウルは戦いに巻き込まれていきます。故郷で戦乱の中にすべてを失った彼は、争いの無い世界を求めて海を渡り、新たな大陸にたどり着きます。しかしそこにも、大陸制覇を目論む〈獅子王〉ダリュワーズの統治する、カイムジェサ帝国がありました。アシュラウルは、争いの無い世界を夢見つつも、それを実現するためにダリュワーズと対決することになります。彼は、自ら「精霊王」を名乗り、カイムジェサ帝国に対抗する「精霊の国」シファリギアを建国します。ここまでが、「神狼記昔語り」である「黒狼秘譚」と「白狼綺伝」で語られます。さらに、アシュラウルは、カイムジェサ帝国の侵略におびえる国々をまとめあげて「神聖連合王国」を樹立し、その神皇帝に即位します。この神聖連合王国とカイムジェサ帝国の最後の戦い、「神狼」アシュラウルと「獅子王」ダリュワーズの決戦が「神狼記」で語られます。
なお、このシリーズは電子書籍版も刊行されています。

神狼記昔語り 黒狼秘譚I 選ばれしもの
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500322-1
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それぞれ敵対する神を崇め、数百年に渡って、対立を続ける二つの民族・二つの国の間で苦悩する、まだ人間として生きようとしていたころのアシュラウルの物語のはじまりです。貧民窟で医師として人々のために尽くしていた彼は、決して神を崇めようとはせず、国王との対立は深まるばかりでした。執政ツォロジルの娘と恋に落ち、ツォロジルの養子となったアシュラウルは、敵国ヴェイアノスとの和平交渉に臨むことになります。しかし、そこにはある陰謀が仕組まれていたのでした……。
神狼記昔語り 黒狼秘譚II 剣の時代
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500328-3
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続けること自体が目的となってしまったような「聖戦」の名のもとに、六百年に渡って争いつづける二つの国の一方、アウラヴェイウェイ神を崇める国ヴェイアノスの王族だったアシュラウル。彼の恋人モアラは、グラウバーウィ神を崇める敵国バウィラノスの女執政。アシュラウルは、国境に恋人との仲を引き裂かれ、さらに、戦を行わずにはいられない状況に追い込まれていきます。
神狼記昔語り 黒狼秘譚III 天の狼煙火
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500336-8
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大規模なバウィラノスの侵攻を前に、滅亡の危機に立たされたヴェイアノス。病の床にあるヴェイアノスの王は、ある秘密の伝説を明らかにします。さまざまな疑問を胸に、アシュラウルたちは、魔霊の森を越えて、うち捨てられたアウラヴェイウェイの神殿へと向かいます。彼らが神殿にたどり着いたとき、数多くの犠牲とともに戦は終わります。そして、すべてを失ったアシュラウルは、従者ベノウィックとともに、海を渡っていくのでした。
神狼記昔語り 白狼綺伝I 魔術士の貌
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500377-1
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生きる気力を無くしたまま海を渡り、新たな大陸にたどりついたアシュラウル。神々の王ロア・スタンの弟であるクウィル・ヴォル神の宮殿・霧幻宮で、ひと冬を過ごしたアシュラウルは、従者ベノウィックとともに、再び人間の世界へと降り立ちます。争いのない世界を夢見るアシュラウルでしたが、そこには大陸制覇を目論む〈獅子王〉ダリュワーズの統治する、カイムジェサ帝国がありました。そこで、カイムジェサ帝国に滅ぼされた故国シヴァートの再興を誓う青年ダナスターンとの出会いがきっかけとなって、アシュラウルは、再び戦いの中に身を置くことになります。クウィル・ヴォル、かなり妖しいです(ちなみにアシュラウルは彼の情人……)。
神狼記昔語り 白狼綺伝II 精霊王の琵琶
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500393-1
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戦いを逃れ、気ままな旅を続けるアシュラウル一行は、呪われた都に閉じ込められたという、アマラン王国の王子ルシュエスの話を耳にします。遠見・予知・読心の力を持ち、カイムジェサ帝国からアマランを守ってきたとされるルシュエスを救出するため、アシュラウル、ベノウィック、ダナスターンと、道中で知り合った青年イキュエが奮闘します。そして、このルシュエス救出後に起きたある事件がきっかけとなって、アシュラウルはカイムジェサ帝国の皇帝ダリュワーズと、帝国に力を与えている妖魔バシュマハドを敵と認識し、それらを打ち倒すことを誓います。ルシュエスがかわいい。
神狼記昔語り 白狼綺伝III 獅子王の毒
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500397-9
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獅子王の毒とは、内乱を起こして侵略を容易にするために、獅子王ことダリュワーズが画策した陰謀のこと。これを打ち破るべく、華やかな宮廷を舞台にアシュラウルたちが活躍します。また、このエピソードで出てくる青年マウリシス……とっても純情な彼は、はかなげな雰囲気のアシュラウルに恋をしてしまいます。そして、アシュラウルの八日間だけの恋人となりますが、これが発端となって、後に彼は非情な選択を迫られることになります。この巻では一番目立っているのは、なんといってもこのマウリシスですね。
神狼記昔語り 白狼綺伝IV 狼の黒い旗
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500407-5
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アシュラウル一行はたった四人で海を渡り、カイムジェサ帝国内にありながら支配の手の届いていない深い谷の奥へと入ります。アシュラウルは、クウィル・ヴォル神によって造られた青耀宮(イレウィス・ダラーム)を拠点に、周辺の遊牧民族を統合し、帝国への対抗勢力へと育て上げていきます。そして、帝国軍の主力が北方諸国へ侵攻している隙を突いて、南から攻め上るという作戦をとることになります。この巻から、これまでにも増して軍事色が強くなります。「剣と魔法」というより「軍事と謀略」のファンタジーですね。
神狼記昔語り 白狼綺伝V 獣神たちの夏
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500419-8
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カイムジェサ帝国に数で大きく劣るアシュラウルの軍団は、多くの犠牲を出しながらも、帝国の領土を削り取り、人々を解放し、ついには帝国との和睦を結ぶことに成功します。こうして「精霊の国」シファリギアと、アシュラウルを神皇帝とする「神聖連合王国」が誕生します。また、天空では神と妖魔の争いがありました。時々顔を出す竜族の王キゼラドが……最後でしっかり分け前を横取り。
神狼記I 神皇帝の椅子
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500257-6
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十年間続いた休戦を破り、カイムジェサ帝国の侵攻が再び始まります。戦闘では新兵器「火薬」が登場。魔術に頼らず、人の手だけで作り出される火薬が出てくるファンタジーというのは珍しいかも……。この侵攻に対抗するため、神皇帝アシュラウルは、神聖連合王国全軍の統帥権を要求し、各国の国王たちに大きな衝撃を与えます。ところで、酔ったルシュエスって、妙に色っぽくていいです。
神狼記II 火焔の群舞
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500261-3
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ついに、帝国に奪われた領土の一つ、ダルナディートの奪回作戦が動き始めます。しかし、この作戦の足を引っ張るように、北方の国ニーヴァンで国王エルダーンが謀叛を起こします。野心を抑え切れなくなったところを、妖魔バシュマハドにつけいられてしまったのでした。アシュラウルはこれを撃退しますが、ますます人間から神へと近づいていきます。全般的に暗い内容ですが、おきゃんな性格の、竜王の孫娘ライラの登場シーンだけは、ほっと一息つけます。
神狼記III 血風の漠野
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500286-6
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ダリュワーズ率いるカイムジェサ帝国遠征軍と、アシュラウル率いるシファリギア軍がついに衝突します。タイトル通り戦争一色。アシュラウルとダリュワーズの一騎打ちもあったりします。一方で、神聖連合王国に属するアマランの王イルディラーンは、その野心を抑え切れなくなりつつあったのでした……。
神狼記IV 夢幻の覇道
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500350-4
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北方では、ダナスターンの悲願だった、シヴァート奪回がはじまり、南方では、シファリギア軍による遠征が開始されます。なのに、アシュラウルは……お茶を飲んでるだけ。しかし、彼の頭の中にはある決意が芽生えていたのでした。アマランの王イルディラーンの謀叛により、神聖連合王国は最大の危機を迎えます。
神狼記V 草奔の戦旗
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500358-0
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堕落した妖魔バシュマハドそのものが作り出す結界に囚われたアシュラウル。カイムジェサの皇帝ダリュワーズは、アシュラウルの挑発にのり、アシュラウルの作り上げた神聖連合王国の布陣に挑みます。これに対して神聖連合王国側では、神皇帝の不在を隠しつつ、帝国軍迎撃の指揮をとる宰相ベノウィック、イルディラーンを巧みに牽制するアマランの王弟ルシュエス、そして、アシュラウルの救出に向かう近衛軍総帥マウリシス……と、アシュラウルの側近たちが活躍します。ところでこの巻って、カバーイラストが「囚われの姫」……妖しい。
神狼記VI 英雄たちの伝説
[著者] 斉城昌美 [イラスト] 加藤俊章
[出版] C★NOVELS Fantasia中央公論新社
[ISBN] 978-4-12-500430-3
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神聖連合王国軍は、カイムジェサ帝国へと攻め込み、帝都バルヤドーゼを目指します。そして、アシュラウルは人間としてダリュワーズに挑み、神としてバシュマハドに挑みます。アシュラウルは自らの生きる道を見出した……といえるのでしょう。シリーズ完結です。
http://www.matsubokkuri.net