南房秀久 (更新終了)

月蝕紀列伝

大主や王によって統治される小さな都市国家が乱立し、常に争いの絶えることのない半島エレネイを舞台に、相互に関連しながら進行していく複数のエピソードが、複数の人物を主人公にして語られる、連作ヒロイックファンタジーです。

シリーズの「主人公」は、妃を手にかけたとして賞金首となった元・国王フレオリック、異端の烙印を押され逃亡を続ける魔道士セイル、主君を殺し賞金首となった元・百人隊長シャインデル、そして血塗れの貴婦人という二つ名を持つ女サイベルの四人。彼らが持つのは、「古き民」が鍛えたという剣、鉄杖、魔法の杖、指輪ですが、これには何か大きな秘密があるようです(最終章で明らかになる?)。さらに、この四人に加えて、たくさんの脇役(?)がシリーズを通して登場します。盗賊の少女ピュティア、謎の「一の神」の巫女アマラなどの重要人物や、不思議な力を持つ「ティーズの驚異の一座」の旅芸人たち、情けない中年の賞金稼ぎダル・ハーなど(他にも、たくさんいます)。

これらの人々が、あちこちの街で、事件に巻き込まれたり、事件を起こしたりするのですが、そこで出会う人々もとても生き生きと描かれています。敵に回る人物も例外ではありません。同じ人物が状況によって、敵になったり味方になったりすることもあります。登場人物の視点から語られているということを強く感じるシリーズです。

氷刃のフレオリック
[著者] 南房秀久 [イラスト] 沢田一
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2695-0
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シリーズ第1巻。主人公は、黒衣の剣士フレオリックと、盗賊の少女ピュティア。フレオリックの持つ剣グリード(氷)は、使い手の心を感じ取るというが、その柄は凍り付いていたのでした……。
暗殺者フレオリック
[著者] 南房秀久 [イラスト] 沢田一
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2749-0
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シリーズ第2巻。主人公は引き続きフレオリックとピュティア。1巻もですけど、盛りだくさんなストーリー展開がなかなかいいです。また、あちこちに「他の事件」に関する伏線が張られているようで、次巻を読むのが楽しみです。
異端の魔道士セイル
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2791-9
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シリーズ第3巻。主人公は異端の罪で、至神智教団に追われている魔道士セイル。時間的には1巻より前になります。フレオリックが訪れていた旅芸人の一座には、既に彼がいたんですね。
決闘者フレオリック
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2821-3
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シリーズ第4巻。再び主役はフレオリック。セイルも登場。ある街で起きた、妖剣アクーザルをめぐる不気味な事件の話です。やや番外編的な感じがしました。重要人物らしき人が、結構顔を出してます。
放浪者フレオリック
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2837-4
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シリーズ第5巻。新主人公シャインデル登場。この巻も、やや番外編的な感じがします。ピュティア大活躍(?)。ところで、3巻からイラストの担当が交替してますが……前の人(沢田一)の方が良かったと思う。
炎狼のシャインデル
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2858-9
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シリーズ第6巻。主人公は今回もシャインデル。ただし、時間的には1巻よりも前の話になります。シリーズを通してあちこちに顔を出す、「ティーズの驚異の一座」誕生の物語。
迷宮のフレオリック
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2886-2
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シリーズ第7巻。四人目の主人公、「血塗れの貴婦人」の名を持つ、蛇神クネプの信者サイベル登場。毒を仕込んだ三本の細剣の使い手です。フレオリックの氷の剣グリード、セイルのマギの杖、シャインデルの炎の鉄杖に続いて、新主人公がどんな武器を操るか楽しみにしてたのですが……彼女のもかっこいいですね。いよいよ主人公の四人が出そろい、ラストにも大きく係わると思われる事件がありました。
紅の貴婦人サイベル
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2909-8
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シリーズ第8巻。「月蝕」の謎が明かされるというミシュハバードの地へと向かう、フレオリックとサイベルの一行は、港町アムサールで領主と市民反乱軍の対立に巻き込まれます。その影にはミシュハバード三神官の一人、オリヴィエの姿が……。この巻で、ついにフレオリック、サイベル、セイルの三人が顔を合わせました。あと、アマラも。やっぱり見事なまでに性格がバラバラということを再確認(笑)。これにシャインデルが加わっても同じでしょうね。戦闘ではフレオリックが一番活躍してるような気がしますが、この巻の中心はやっぱりサイベルです。彼女の過去の一部も明かされますし、何よりその言動で目立ちまくってます。ダル・ハーが踏まれてますし……。激しい戦いの後、賞金首4人と、その相棒その他と、一の神の巫女は、彼らの運命が待つというミシュハバードへ向けて出発しました。彼らはそこで何を見るのでしょうか?
氷剣悲歌
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2928-9
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シリーズ第9巻。最終章直前の本編は一休みして、今回は短編集です。ほとんどがフレオリック(とピュティア)の話です。収録されている話の中では、「風斬」が一番気に入ってます。フレオリックの首に賞金をかけたザモーラの太守、なかなかいい味出してます。「敵」であっても「悪」ではないんですよね。
終焉の叛逆者 上
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2945-6
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いよいよシリーズ最終章……なんですが、とてもいいところで話が終わってます。「名を秘すべき神」の三神官が統治するミシュハバードへと侵入したフレオリック一行。しかし、フレオリックはサイベルたちを裏切り、三神官の側へ。そして、世界には「古き民」が試練と呼ぶ、「月蝕」の時が近づいていました……。
終焉の叛逆者 下
[著者] 南房秀久 [イラスト] 井上純弐
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-2950-0
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シリーズ最終巻です。これまでの調子を崩すことなく、ちゃんと終わってくれました。ミシュハバードの地にて、「月蝕」の謎と、三神官の目的と、さらにフレオリックたちに課せられた使命が明かされます。氷の剣、マギの杖、炎の鉄杖、蛇神の指輪が共鳴し、アマラの水晶球が預言の成就を示して輝くのはお約束(密かに期待してました。やっぱり、こういうのがないとね……)。主要人物総登場も嬉しいです(少し顔を出す程度ですが)。全体的に地味な感じのシリーズでしたが、登場人物がたくさんいて、それぞれが歩む道がたまたま重なって、しばらくの間だけ寄り道し、力を合わせて大きな事をなしとげて、その後は再び自分の道に戻っていく……全体を通してのこんな感じの展開が気に入りました。

9 TAILS

9 TAILS ―ナイン・テイルズ 疾風のサキ―
[著者] 南房秀久 [イラスト] シンゴ
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-1724-8
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9 TAILS II ―ナイン・テイルズ 聖巫女の預言―
[著者] 南房秀久 [イラスト] シンゴ
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-1771-2
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9 TAILS III ―ナイン・テイルズ 刻の終わりに―
[著者] 南房秀久 [イラスト] シンゴ
[出版] 富士見ファンタジア文庫富士見書房
[ISBN] 978-4-8291-1807-8
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http://www.matsubokkuri.net