デルフィニア戦記
ストーリーの面白さはもちろんのこと、破天荒な登場人物たちが、あちこちで繰り広げる掛け合い漫才的な会話&行動の数々が、極めて高い評価を得ている異世界ファンタジーの超大作。本人は何気なくしゃべったり、行動したりしているつもりでも、特定の条件下では大爆笑! そんな場面でいっぱいなシリーズです。
庶子であったために陰謀によって国を追われ、自由戦士の姿で放浪を続けていたデルフィニア国王ウォル。十人もの刺客に襲われ、絶体絶命の危機にあったウォルを救ったのは、異世界からおっこちて来たひとりの少女でした。リィという名のこの少女は、外見に似合わず、偉丈夫のウォルに勝るとも劣らない戦士だったのです。協力して刺客を撃退したウォルとリィは意気投合し、互いに相手を同盟者と認めて、ともに王国奪回へと乗り出します。そして、旅を続ける彼らのもとには、ウォルを国王と認めて、ともに戦うことを誓う人々(かつてウォルに仕えていた将軍や騎士団長とその部下たち、今は山賊(?)をやっているウォルの昔の友人など)が続々と集まり、いつしか大軍勢となってデルフィニアの都コーラルへと迫っていきます。
この主人公ウォルは、優れた国王であり、同時に優れた戦士でもあるのですが、普段は「くまさん」とでもいいたくなるような性格で、周囲を脱力させる台詞を連発する「変な王様」なのです。これに対して、もう一人の主人公リィは、外見に似合わず、ウォルに匹敵する力と技と頭脳の持ち主(これ自体が周囲を混乱させる最大の要因ですけど)なのですが、こちらも周囲を絶句させる台詞を連発します。そして、この二人が意気投合すると、周囲をパニックに陥れるような状況になります。
なお、王国奪回まででシリーズ全体の約4分の1で、その後は、デルフィニアの都コーラルを中心にストーリーが展開します。王宮が舞台になることもあって、雰囲気は一気に華やかになります。コーラルでは、ウォルの愛妾の座をめぐる争いや国王の世継問題などで、さまざまな陰謀が繰り広げられます。同時に、隣接する大国との政治的駆引きや、さらには戦争も勃発し、ウォルとリィは同盟者として、ともに戦います。なお、王国奪回後も、掛け合い漫才は健在です。王宮でも戦場でも、ウォルとリィは周囲を絶句させ続けます。ときには、周辺登場人物からの反撃(?)もあったりもします。
こうして(?)話が進むにつれ、次第にリィという存在がクローズアップされてきます。リィがもといた異世界とはどのようなところなのか? そこでいったい何があったのか? リィが時折見せる人間離れした能力の秘密とは? そもそもリィとは「何」なのか? 数多くの謎の存在にも関わらず、ウォルは最初の約束を違えず、同盟者としてリィに接しつづけます。異世界からたった一人で放り出されたリィは、こんなウォルやその他のデルフィニアの人々に支えられ、異世界から迎えが来るのを待ちつづけます。リィが待ち続けている「迎えの者」とは、いったいどんな者なのでしょうか……?
ストーリー、登場人物、会話など、どれをとってもすばらしいシリーズです。沖麻実也さんのイラストも最高! 全18巻と長いですが、最初から最後まで、手に汗握って、ついでに爆笑までできる傑作です。
ところで私は「銀の侍女」シェラが好き(笑)。
なお、このシリーズは中公文庫でも刊行されています。
放浪の戦士 デルフィニア戦記1
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500260-6
黄金の戦女神 デルフィニア戦記2
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500265-1
白亜宮の陰影 デルフィニア戦記3
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500276-7
空漠の玉座 デルフィニア戦記4
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500289-7
異郷の煌姫 デルフィニア戦記5
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500321-4
獅子の胎動 デルフィニア戦記6
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500341-2
コーラルの嵐 デルフィニア戦記7
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500357-3
風塵の群雄 デルフィニア戦記8
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500378-8
動乱の序章 デルフィニア戦記9
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500396-2
憂愁の妃将軍 デルフィニア戦記10
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500417-4
妖雲の舞曲 デルフィニア戦記11
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500444-0
ファロットの誘惑 デルフィニア戦記12
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500463-1
闘神達の祝宴 デルフィニア戦記13
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500482-2
紅の喪章 デルフィニア戦記14
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500506-5
勝利への誘い デルフィニア戦記15
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500516-4
伝説の終焉 デルフィニア戦記16
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500544-7
遥かなる星の流れに 上 デルフィニア戦記17
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500569-0
遥かなる星の流れに 下 デルフィニア戦記18
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500571-3
大鷲の誓い デルフィニア戦記外伝
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-500939-1
コーラル城の平穏な日々 デルフィニア戦記外伝2
- [出版] C★NOVELS Fantasia(中央公論新社)
- [ISBN] 978-4-12-501145-5
レディ・ガンナー・シリーズ
あとがきにある「けむけむ大作戦」というタイトルの方がしっくりくるような気がする作品です。意に添わない結婚をさせられそうになっている幼なじみの婚約者を演じるために、侍女とともに隣国へ向けて出発した少女キャサリン。悪天候のため客船はすべて欠航していると知った彼女は、治安の悪い陸路で行くことを決意します。そして、なりゆきで彼女が雇うことになった用心棒が、猫の瞳の少女と、粗野な感じの黒髪の青年と、女言葉の青年と、清楚な美少年の、怪しさいっぱいの四人組。馬車で街を後にした彼らは、さっそく盗賊に襲撃されてしまいますが、これに対する用心棒達の戦い振りは……? あちこちで登場する、「アナザーレイス」と呼ばれる、人間と動物の二つの姿を取ることができ、しかも人間との混血が可能な種族たちの存在感が強烈な話です。哺乳類だけでなく、爬虫類やら鳥類やら、いろいろ出てきて楽しいです。そして、こんなアナザーレイスと人間がそれなりに共存した状態で、技術が進歩しつつある(鉄道や電信が存在する)という世界設定も魅力的です。
レディ・ガンナーの冒険
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423101-9
レディ・ガンナーの大追跡 上
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423102-6
レディ・ガンナーの大追跡 下
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423103-3
レディ・ガンナーと宝石泥棒
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423104-0
レディ・ガンナーと二人の皇子 上
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423105-7
レディ・ガンナーと二人の皇子 中
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423106-4
レディ・ガンナーと二人の皇子 下
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423107-1
レディ・ガンナーと虹色の羽
- [出版] スニーカー文庫(角川書店)
- [ISBN] 978-4-04-423108-8