朱鷺田祐介 (更新終了)

火龍面舞

禁断の魔獣生成の秘法に手を出したために魔道師学院を追放され、さらに魔獣生成の研究と実践を行っている秘密結社〈獣師同盟〉からも逃げ出した魔道師レディアス。彼が〈獣師同盟〉を脱走したのは、秘法を得るために魔族への生け贄に捧げた女性サイアを愛していたことに気づいてしまったからでした。その後、ある都に隠れ住んで、魔道師として暮らしていたレディアスは、〈獣師同盟〉がらみの事件の解決を依頼されます。これを引き受けた彼は、依頼を果たすために向かった都で、ある魔獣との再会を予感します。その魔獣とは、かつてレディアスが愛したサイアの姿を持ち、彼の故郷を滅ぼした存在でした……。

「深淵」というテーブルトークRPG世界を舞台とするファンタジーです(ゲームのほうは詳しくは知りません)。「天城紀」「魔棲代」「女王紀」「巨棲代」に続く五番目の時代「妖精代」の末期、世界を支配してきた妖精騎士たちが姿を消し、封印されていた魔族たちが復活の機会をうかがい、秩序が乱れはじめている時代がこの話の舞台で、全体を通して漂う「黄昏」の雰囲気が魅力的です。

ところで、このクライマックスは……「愛」ですね。

火龍面舞
[著者] 朱鷺田祐介 [イラスト] 田口順子
[出版] ファンタジーの森(プランニングハウス)
[ISBN] 978-4-939073-05-2
Amazon.co.jp

丘の上の貴婦人

水の魔性を従えた侯爵ガイウスに、故郷を滅ぼされ、両親を失った姫君ソニア。復讐を誓い、白銀の鎧をまとって戦い続け、「漂泊の戦姫」と呼ばれるようになった彼女は、十年ぶりに再会した婚約者である騎士リシャールとともに、ガイウスに敵対するユラス男爵の領土を訪れます。ソニアたちの目的は、ユラス男爵と同盟の密約を結ぶこと。しかし、ユラスは魔族を信仰し「北の魔人」と呼ばれる存在でした……。冒頭から繰り返し語られる、「龍退治に旅立った王子の帰還を待ちつづける姫君」の伝承に秘められた真実が明らかになったとき、ソニアは、闇の中に自分の生きる場を見出します。

「火龍面舞」と同じく、テーブルトークRPG「深淵」の世界を舞台とするファンタジーです。この話では、死を超越しており、変化することがなく、信仰に応える力のない神々にかわって信仰されているという「魔族」が重要な役割を果たしています。この話も、全体を通して「黄昏」あるいは「宵闇」の雰囲気が漂っています。背景世界と登場人物とストーリーにある「闇」の部分が魅力的です。

丘の上の貴婦人 上
[著者] 朱鷺田祐介 [イラスト] 田口順子
[出版] ファンタジーの森(プランニングハウス)
[ISBN] 978-4-939073-18-2
Amazon.co.jp
丘の上の貴婦人 下
[著者] 朱鷺田祐介 [イラスト] 田口順子
[出版] ファンタジーの森(プランニングハウス)
[ISBN] 978-4-939073-19-9
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http://www.matsubokkuri.net