魔女の戴冠
魔女の戴冠 I
- [出版] 幻狼ファンタジアノベルス(幻冬舎コミックス)
- [ISBN] 978-4-344-81389-2
- 魔法が復活し、科学と共存している世界で、白魔女を育成する聖エレオノーラ女学院に通う銀髪の少女キアラ。唯一の身内だった兄をマフィアに殺されたキアラは、復讐のために禁じられた黒魔術に手を出しますが、儀式の場に何故か現れた、貧乏旅行者の美青年アーダルベルトに阻止されます。こうして偶然出会ったキアラとアーダルベルトでしたが、彼らの背後には意外なところでつながりがあったのでした。キアラの兄の死の真相、アーダルベルトの正体と過去、そして魔法使いによる殺戮「災厄」が見え隠れしつつ、物語は進んでいきます。 魔女っ娘(いちおう)が主人公で、登場人物の大部分がどことなくギャグキャラっぽくて、雰囲気も一見コミカルですが、待っているのは殺伐とした展開です。魔女っ娘学園とマフィアの抗争(これはまだコミカル)、陰惨な殺人事件、そしてアーダルベルトの抱えている闇が見えてきたところで次巻に続きます。
魔女の戴冠 II
- [出版] 幻狼ファンタジアノベルス(幻冬舎コミックス)
- [ISBN] 978-4-344-81546-9
- シリーズ第2巻。学園を何とか進級し、友人のリィリィと一緒に夏休みの旅行に出かけたキアラ。ところが、彼女たちの乗った列車が事故を起こし、しかも何者かの魔法により救助も妨害されて乗客たちは孤立します。しかし、それは新たなる「災厄」の始まりに過ぎなかったのでした。 登場人物の大部分がどことなくギャクキャラっぽいところはそのままに、殺伐さ、陰惨さが大幅アップの第2巻です。様々な魔法がらみの事件のつながりと、その背後の黒幕らしき人々、そして彼らが追い求める「禁断の秘術」の存在が垣間見えてきたところで次巻に続きます。
魔女の戴冠 III
- [出版] 幻狼ファンタジアノベルス(幻冬舎コミックス)
- [ISBN] 978-4-344-81631-2
- シリーズ第3巻。黒魔術師集団を率いるセレスタンの仕掛けた罠に捕らえられたものの、何とか脱出したキアラ。しかし、セレスタンの陰謀の手は既に教皇庁にまで伸びていました。敵に回った教皇庁と、禁断の「操心術」の使い手に対して、キアラとアーダルベルトは打ち勝つことができるのでしょうか……? 殺伐さ、陰惨さはさらにアップしつつも、登場人物は相変わらずです。極道一家と魔女学校との共闘もあり楽しめました。魔女ってお茶目な人が多いのでしょうか。何はともあれ、この巻で本編完結です。
魔女の戴冠 ―ラ・ドルチェ・ヴィータ―
- [出版] 幻狼ファンタジアノベルス(幻冬舎コミックス)
- [ISBN] 978-4-344-81814-9
- 本編では、常に冷静沈着な優等生として登場した少女チェチリアが主人公のシリーズ番外編。誰にも言えない彼女の秘密……亡き母の残した莫大な借金。その返済のため、彼女は聖エレオノーラ女学院に入り、魔女となって金を稼げる職業に就くことを目指します。こうして、借金取りエドに催促されながら奔走する、チェチリアの物語です。 本編と比べて殺伐とした場面はなく、明るく楽しい魔女っ子ものでした。
薔薇の王 ロサ・アルティーザ
薔薇の王 ロサ・アルティーザ
- [出版] A-NOVELS(エンターブレイン)
- [ISBN] 978-4-7577-0579-1
- 性格が一部崩れたキャラ(いわゆる高瀬キャラ)による、現代が舞台のファンタジー。テーマは「ガーデニング」で、タイトルとカバーイラスト、人里離れた全寮制男子校という舞台に反して(?)色気はほとんどありません(笑)。とりあえずの主人公は、アルティーザという名の薔薇の苗とともに学園にやってきた少年ミューゼルと、顔と園芸だけが取り柄の「人間のクズ」少年フリードです。園芸マニア・フリードの世話により、毎年、血のように赤い花を咲かせるアルティーザを、何かを待ち焦がれるように見つめ続けるミューゼル。彼が待ち望んでいるものとはいったい……? あらすじはシリアスですけど、一部のキャラの性格のせいでノリはいわゆる高瀬調。「悪の名は俺がもらった」「ユグドラシルで会おう」……台詞だけ抜き出すとかっこいいんですけどね(笑)。なお、この1冊では話は完結していません。
クシアラータの覇王
このシリーズは、最初は、砂漠の小さな王国クシアラータを舞台にした、シリアスな異世界ファンタジーです。クシアラータはもともと魔族と呼ばれる、長命で不可思議な力をもつ種族のものでした。この魔族たちを少年王ルカナが追いだし、人間の王国を作りました。それから二百年あまり後、王国のシュリンク将軍が王を虐殺し、自ら王を名乗ります。シュリンク王には息子シヴァが、虐殺された王には娘サラがいました。砂漠へ逃れたサラは地下都市に隠れすんでいた魔族の王ラディヤードと出会い、そこで暮らすようになります。一方シヴァはシュリンク王の跡継ぎとして育てられます。そして十年後、シヴァとサラは出会います。そして……。
2巻までは大きな崩れはなく(崩れる兆候は随所に見られますが)、何とか持ちこたえているのですが、3巻あたりから急激に崩れ始め、4巻のリーズライン姫によって、ほぼ「異世界ラブコメディー」になっちゃいます。シリアスとギャグの混在したストーリーが、数多くの魅力的な登場人物たち(全部で80人以上!)によって語られる、残酷な展開もあるけどとても楽しいシリーズです。特にシリアスとギャグの切り変わりが絶妙です。麻々原絵里依さんのイラストも、作品の雰囲気によく合っています(魔族の美姫グラスターシャなんて、イメージにぴったり)。ちなみにラストは怒涛のハッピーエンドで読後感も爽快です。私は高瀬美恵の最高傑作だと思っています。
クシアラータの覇王1 赤い砂漠の妖姫
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王2 ゆれる火影の都
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王3 檻のなかの姫君
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王4 地底宮の長い夜
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王5 光と闇の遁走曲
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王6 死せる覇者の夢
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王7 炎鎖の森の虜囚
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王8 凍れる月の契約
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王9 擾乱の都の乙女
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王10 曙光の国の覇王
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王外伝 銀の聖域
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
クシアラータの覇王外伝 王都の落日
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
ヴィアン・マーレの海首
こちらも、シリアスとギャグの混在したストーリーが、シリアスとギャグの混在したキャラクターによって語られるシリーズですが、シリアスとギャグの切り替えに、さらに磨きがかかっています。竜王の娘である白夜姫と人間の若者の悲しい恋の物語、二人の間に生まれた子供ティノッサの成長(?)。竜王に仕える水霊族の長であり、ティノッサを溺愛するファスティアリナーサの暗躍(?)。都市ヴィアン・マーレの「海首」の地位をめぐる争い(?)。幼い頃にティノッサの面倒を見て育ったアライアとシャロナーンの運命的な対決(?)。そして、新海首によって引き起こされた、ヴィアン・マーレと周辺諸国との戦争の危機に、彼らはどう動くのか?。展開は「クシアラータ」と違ってかなり苦いもので、「悲劇」が基本の話のような気がします。なのに、そこにギャグが入り込んでいます。これが、不思議に心地いいのです。なお、イラストは田村由美で、これまた作品の雰囲気によくあっています。
憂い顔の姫君
- [出版] キャンバス文庫(小学館)
レオンヌ海の荒鷲
- [出版] キャンバス文庫(小学館)
女神の黒扇
- [出版] キャンバス文庫(小学館)
冬雷の都
- [出版] キャンバス文庫(小学館)
ミルドラの双帝
- [出版] キャンバス文庫(小学館)
雪原の果て
- [出版] キャンバス文庫(小学館)
硝子の波
- [出版] キャンバス文庫(小学館)
禍つ姫の系譜
これも「途中から崩れる」シリーズです(実は最初から崩れているけど、気づきにくい)。シリアスと思って読んでいると、ギャグの不意打ちを食らって吹っ飛んでしまうでしょう。舞台は現代日本。闇の武闘一族「黒桔梗」の末裔である桔梗一奈が主人公です。彼女の通う白雪女学院にはソロリティと呼ばれる謎の学内組織があり、彼女はその会長もやっています。で、実はこの学内組織、かつて黒桔梗に滅ぼされた純白の秘密結社しらゆき団の末裔が作り上げたものなのでした(この設定からして崩れかかっているといえますが、気づきにくい構成になっています)。こんな彼女の前に突如現われた魔王ルドヴィース。彼は一奈の持つ桔梗の秘宝の銀環を奪い、忠誠を求めます。これに対して一奈は……………………(笑)。
失墜のミネルヴァ
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
白昼のエンジェル
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
美貌のサラマンドラ
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
殺意のアバランシュ
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
陽炎のレクイエム
- [出版] X文庫ホワイトハート(講談社)
神々の谷
あとがきによると、お約束通りで不必要なまでに大袈裟な展開……という意味で「コテコテ」なシリーズです。工場や貧民街からなる「下区」と、上流階級が住むチューブ状居住区「上区」から構成された巨大都市・ミティリナが主な舞台です。また、もう一つの物語の舞台が「神々の谷」……人間の生み出す毒気を清める力をもつ真人族の住むところです。ミティリナ・シティと神々の谷の雰囲気が不気味なまでに対照的。シリアスなのかギャグなのかよく分からない、高瀬さんらしいシリーズです。