河上朔 (更新終了)

wonder wonderful

therehere」で公開されているオンライン小説のノベルズ化作品です。

二十七歳の普通の社会人こかげと、何度か秘密の異世界行きをしている妹ひなた。週末の夜、ひなたの危機を夢で見たこかげは、ひなたを救うために異世界へと飛び込みます。こうして王国ディーカルアへとやってきたこかげが体験する、様々な人々との出会いと交流、そして別れの物語です。主人公はこかげで、本編は彼女の一人称で語られます。

ひなたは国王ザキの想い人になっているのですが、そこに飛び込んだ姉のこかげという存在は、王宮の人々になにやら良くないことを連想させるらしく、こかげは何かと厳しく理不尽な扱いをされることになります。しかし、こかげは持ち前の性格と行動力で居場所を確保し、次第に王宮や街の人々にも認められるようになっていきます。そして再び訪れたひなたの危機を前にして、こかげは王国全体を巻き込む、ある作戦に打って出たのでした……。

一般的に分類すると異世界召喚ものに入る作品ですが、隣国との対立とか王位争いとかに関わっていた(らしい)のは妹ひなたの方で、ある程度王国が落ち着いたところに後からこかげが飛び込むという、一風変わった形になっています。そこでこかげは、ひなたにはできなかった、凝り固まったわだかまりを解きほぐすような役割を果たすことになります。そんなわけで、ラストは素晴らしく爽快なものでした(見開きイラストがこれまた良いです)。

しかし、「○○の女」作戦を思いついたこかげですが、実は意識しなくても「○○の女」だったようですね(笑)。

なお、著者のサイト「therehere」で番外編が公開されています。

wonder wonderful 上
[著者] 河上朔 [イラスト] 結布
[出版] イースト・プレス
[ISBN] 978-4-87257-944-4
Amazon.co.jp
wonder wonderful 下
[著者] 河上朔 [イラスト] 結布
[出版] イースト・プレス
[ISBN] 978-4-87257-945-1
Amazon.co.jp
wonder wonderful 君がくれた世界
[著者] 河上朔 [イラスト] 結布
[出版] イースト・プレス
[ISBN] 978-4-7816-0328-5
Amazon.co.jp
本編は上下巻で完結したシリーズの、番外編短編集です。ルカナートの初恋「信じるならば君の心を」、シルヴィアナとライオスの恋物語「何度でも」、ラシュとシーリーとヨーサムの三人が出会った頃の話「さても楽しき」、コカゲとルカナートの花祭りの夜の物語「だからひそやかに祈るよ」の4編が収録されています。 どれも素晴らしい話ですが、この中では「何度でも」が一番気に入っています。本編で強烈な個性を見せたシルヴィアナですが、彼女がなぜあのような性格に育ったのかが分かります。そして、ライオスとの微妙な距離感を一進一退しつつ詰めていくところが良いです。あと、「信じるならば君の心を」に登場のちびザキくんが可愛いです。本編のザキくんと読み比べて可愛さ倍増です(笑)。 「だからひそやかに祈るよ」を読んだら、本編をまた最初から再読したくなりました……。

楽園のとなり

楽園のとなり
[著者] 河上朔 [イラスト] あき
[出版] イースト・プレス
[ISBN] 978-4-7816-0556-2
Amazon.co.jp
王立騎士団に入ることを目指し、日々努力を重ねてきた少女カンナ。しかし彼女は、武術学校ではずっと特待生で実力は十分なのに、年に一度の試験では何故かトラブルに巻き込まれ、受験できないということを繰り返してきました。そして、四度目の試験まであと一ヶ月となった日の夜、カンナは街で行き倒れの美少年を拾います。シンクというなのその少年は、何かややこしい事情を抱えているらしく、何者かに追われていました。カンナは試験を気にしつつも、彼を放っておけず、かくまうことを決めたのでした。一方、シンクは疑り深く、逃げるようにカンナの元を出て行こうとするのですが……。 頑張っているのに肝心なところで不運に見舞われてきた少女と、何か訳ありで面倒事から逃げ回っているらしい少年の話です。ラストでの、カンナが「証明」する場面と、ホットチョコレートのエピソードが気に入ってます。
http://www.matsubokkuri.net