ハイペリオン
時の流れに逆行する遺跡〈時間の墓標〉が存在し、謎めいた怪物シュライクの伝説があるという、辺境の惑星ハイペリオン。転移ゲート網で結ばれた二百以上の惑星からなる人類世界〈ウェブ〉から遠く離れたこの惑星を、連邦政府の要請を受けた七人の巡礼たちが訪れます。開きつつあるという〈時間の墓標〉には、全人類の命運を決めるものが存在し、七人はそれに深く関わりがあるとされたのです。この謎をとく手がかりを求めて、司祭、戦士、詩人、学者、探偵、領事、船長という、まったく異なる過去をもつ七人は、軌道上から宇宙港に降り、地上を旅して〈時間の墓標〉にたどりつくまでの間に、それぞれの身の上に起きたできごとを、互いに語ることになります。しかし、惑星ハイペリオンには、遥か昔に人類からわかれて独自の進化をとげ、宇宙の蛮族ともよばれている種族、アウスターの大艦隊が迫りつつあったのでした……。巡礼たちの物語は、「惑星ハイペリオン」をキーワードに密接に関係したものになっています。それぞれの話には、真実の一面が隠されていて、全体を通して読むとそれらが浮かび上がってくるという構成になっています。が、この「ハイペリオン」を最後まで読んでも、まだ謎は解決されていません。謎は、また別の視点からの物語「ハイペリオンの没落」で明かされる……と思います。それにしても、ぶ厚い本ですね（ハードカバーで500ページ以上）。が、その厚さが苦にならない（といより、かえって嬉しく感じる）面白さでした。
ハイペリオン 上- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011333-9
ハイペリオン 下- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011334-6
ハイペリオンの没落
「ハイペリオン」よりもぶ厚い続編です。続編というより後編かも。後編といっても、構成は異なります。「ハイペリオン」は、すべて巡礼のミクロな視点での物語でしたが、「ハイペリオンの没落」はマクロな視点で書かれています。そして、両方を合わせて一つの大きな物語を構成しています。この作品では、転移ゲート網で結ばれた〈ウェブ〉を駆け回る連邦ＣＥＯと、彼女（ＣＥＯは女性なのです）に招かれた画家(?)の視点を中心に、巡礼たちの視点が混じります。時間的には「ハイペリオン」のラストに続く物語で、その厚さが嬉しく感じる内容でした。
ハイペリオンの没落 上- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011348-3
ハイペリオンの没落 下- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011349-0
エンディミオン
「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」二部作に続く、新二部作の第一部です。前作より約300年後の惑星ハイペリオンより始まる、羊飼いの青年エンディミオンと、〈時間の墓標〉より現れた少女アイネイアーの、星々を巡る冒険の物語。彼らを追跡するのは、カトリック教会の神父大佐デ・ソヤ率いる追跡隊（しかし、大天使級急使船って「死んでも」乗りたくないな……）。さらにその裏には……いやー、スケールが大きい！ とにかく大きい！ さらに今回も分厚いです（ハードカバーで600ページ近く）。が、前作同様、この一冊では話は終わらず、「エンディミオンの覚醒」に続きます。また、「個人の視点」と「全体の視点」を対比させた構成の前二部作とは異なり、今度の二部作は前後編に近い構成になってます。
エンディミオン 上- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011389-6
エンディミオン 下- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011390-2
エンディミオンの覚醒
……というわけでシリーズ完結。二部作の「後編」ということで、「前編」である「エンディミオン」の上を行くスケールの大きさです（頭がオーバーフローしてます）。前作（に加えて、「ハイペリオン」二部作）の謎解きが大量にあるので、本作がこれまでのシリーズ全体を上回るスケールになるのは必然ともいえるんですけどね。あと、読んでいて、細かいところで気になった点はいくつかあったはずなのですが、読み終えたらほとんど忘れてしまいました（たぶん再読しないと思い出せないでしょう）。何はともあれ、シリーズ全四巻、二段組みのハードカバーで合計2500ページの超大作、大いに楽しませていただきました。
エンディミオンの覚醒 上- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011423-7
エンディミオンの覚醒 下- [出版] ハヤカワ文庫ＳＦ（早川書房）
- [ISBN] 978-4-15-011424-4
